フェイスリフトの仕上がりを左右するのは、単に組織を「強く引く」ことではありません。引き上げる力を、頬や口元など改善したい場所までどのように届けるかが重要です。その鍵となるのが、顔の支持靱帯と、その周囲にある組織の連続性です。
支持靱帯は、顔の組織を支える固定点
顔には、骨や深部組織から皮膚側へ伸びる支持靱帯(リガメント)があります。支持靱帯は、皮膚やSMAS(表在性筋膜系)を一定の位置に保つ役割を担う一方、フェイスリフトでは、引き上げる力を途中で留める固定点にもなります。
図では、骨膜や深筋膜に付着する太い幹がSMASを通過して枝分かれし、皮下ではretinacular cutis(皮膚支帯)という、より細い線維となって真皮へ連続する様子が樹木に例えられています。支持靱帯は一本の紐のような構造ではなく、顔の深部から皮膚までの各層を連結する、多段階の線維性支持システムとして捉えることができます。
フェイスリフトでは耳の前後から皮膚やSMASを引き上げます。しかし、引く方向と改善したい部位との間に固定点が残っていると、力が顔の中央まで十分に伝わりません。
模型で見る「力が届かない」状態
ここでは、青い布を皮膚・SMAS、クリップを支持靱帯に見立てます。顔の外側から青い布を引いても、途中をクリップで留めたままでは、その先にある顔の前方まで力が伝わりません。
靱帯を適切に解放すると、力が前方へ伝わる
固定点となっているクリップを外すと、青い布を引く力が顔の前方まで伝わります。この模型が示すように、支持靱帯の適切な処理は、フェイスリフトの効果を必要な部位へ届けるための重要な工程です。
ただし、実際の顔では、処理すべき対象が明確な支持靱帯だけとは限りません。
靱帯だけではない「面としてのつながり」も処理する
皮膚・SMASと深部組織の間には、支持靱帯のような強い固定点に加えて、広い範囲で組織同士がつながる部分があります。模型では、この状態を黒い印と裏側のテープで表現しています。
これは「糊付け」のようにイメージすると分かりやすいでしょう。支持靱帯だけを解放しても、この広い範囲のつながりが残っていれば、引き上げる力が十分に伝わらないことがあります。
Extended Deep Planeで重視していること
Extended Deep Plane Faceliftでは、支持靱帯の処理に加えて、その周囲に広がる組織のつながりを、必要な範囲で丁寧に解放します。これにより、SMASを無理に強く引くのではなく、組織が本来動くべき層で移動しやすい状態をつくります。
顔の解剖や組織のつながり方には個人差があります。そのため、どの部位をどこまで解放するかは一律ではなく、診察所見と手術中の状態に合わせて判断する必要があります。
Deep Planeと靱帯処理
よく「Deep Planeでは靱帯処理を行う」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。靱帯は、骨から皮膚へ向かって伸びる線維性の支持構造と定義され、SMASより浅い層にも連続しています。そのため、SMASより浅い層で剥離する術式でも、靱帯の一部を処理することは可能です。
「靱帯処理」という一言だけでは、実際の操作内容は分かりません。どの深さで、どの靱帯や支持組織を、どこまで解放するのかによって意味が大きく異なるため、この点を理解して術式を比較することが重要です。
まとめ
フェイスリフトで押さえておきたい3つのポイント
- 支持靱帯は顔を支える一方、引き上げる力を途中で留める固定点にもなります。
- 靱帯を適切に解放することで、力を頬や口元まで伝えやすくなります。
- 靱帯だけでなく、周囲に広がる組織のつながりも評価することが重要です。
フェイスリフトは、術式の名称だけで内容を判断できる手術ではありません。どの層を扱い、どこまで解放し、どの方向へ組織を移動させるか。その設計と丁寧な操作の積み重ねが、自然な変化につながります。